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うさぎと暮らす野鳥好き

nasu00012007-01-26

せっせっせは「いつかオレは〈虎のオヤツ〉になるのだ」と夢見て、日々を暮らしていた。
やる気まんまんだった。
せっせっせは「虎」も「オヤツ」もなんなのかは知らなかった。
でもそれになることはたいそうかっこよく思えた。
「だって〈虎のオヤツ〉だぜ」。せっせっせはつよく思っていた。
 
ここで暮らしているといずれ〈虎のオヤツ〉にしてもらえるというのは、
以前となりにいたモルモットに教えてもらったのだ。
モルモットは言っていた。「ずっとここにいるとそうなっちまう」。
せっせっせにそう教えたモルモットはもうとなりにはいなくなっていた。
どこにいったのかはせっせっせにはわからなかった。
「多分〈虎のオヤツ〉になったのに違いない、次はオレだ!」。せっせっせは思っていた。
 
せっせっせのケージの前には「6000円」という模様がかけられている。
この模様がなんなのかせっせっせにはわからなかったが、
「つよくてかっこいいオレ」という意味だと思っていた。
それが昨日「2980円」という模様に掛け替えられた。
せっせっせは考えていた。
「これはどういう意味だろう、もうすぐ〈虎のおやつ〉になるかっこいいオレ」ということかな。
「だったらうれしいな」、せっせっせは思った。

2004年1月1日。親に顔を見せるため奥さんと一緒に私の実家を訪れた。帰りに近郊型スーパーにテナントとして入っているペット・ショップにふらりと立ち寄った。そこで、ほとんど成長しきったミニウサギに「半額! 2980円」という札がかけられているのを見た。

ペット・ショップという形態はほとんど害悪そのものだ。ペットを増やすなら、引き取り先ができてはじめて繁殖に入るブリーダー型でなくてはならない。ペット・ショップ型だとこうして売れ残る個体がでてくる。それをどうするのかほとんどその知識を持っていないが、きっと件のモルモットは正鵠を射ているのではないか。あるいはもっと陰惨なところかもしれない。
そしてまた、犬、猫はさておきペット・ショップにおけるウサギの健康状態は著しく悪い。食事がすべてペレットだったり、すのこが著しく汚れていたり。ここはそうでもなかったけれど、大体はウサギの飼い方を知らないやつらがウサギを売っている。ほんとうにどうしようもない。

ほんとうは〈虎のおやつ〉という運命から救い出すためにだって、ペット・ショップにお金を払うということをやめるべきなのだ。たとえは著しく悪いが、「奴隷を解放するために奴隷商人から奴隷を買う」ようなもので、奴隷商人はますます肥え太るばかりでなく、それが商売になるとわかったら、そこにマーケットができてそういう商売をするやつらがどんどん増えてしまう。

が、しかし、ふたりともこのうさぎの魅力にすでに負けてしまっていたので、連れて帰ることにした。

変なふたりに拉致され、せっせっせは〈虎のおやつ〉にはなることができなかった。
「がっかりだ」。せっせっせはチモシーをばりばり食べながら思った。
 
せっせっせはせっせっせのままここにいて、
にんじんをくわえながら、
変なふたりの足の周りをまさに今、ぐるぐるぐるぐるまわっている。

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うさぎにニンジン、キャベツを与える。日常業務。

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菜の花。

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せしせしはニンジンを食べた。「そんなにぬけたらハゲになってしまうよ」ってぐらいせっつんの毛が抜けている。ふたりがかりでブラッシングしているが、抜いても抜いても湧き出る泉のごとくせし毛が! 駄菓子屋で売っている「たたり煙り」のように室内にせしせしの毛が舞う。

■行き帰りにロバート・A・ハインライン『愛に時間を』。再々々々読、終わり。