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うさぎと暮らす野鳥好き

nasu00012013-11-30

▽せせせにニンジンを与える。
ゴンチャロフ『日本渡航記』。かなはそのまま、漢字だけ改めた。

『へ、へ、へ!』と通詞は、御検使の答へが続く間中、きれぎれに受け応へた。『へ』といふ助詞は『はい』とか『承知しました』といふやうな、肯定を意味する。これは目下の者が、目上の人から話を聞く時にだけ使ふのである。(p. 67)

彼には我々が日本を取らうと取るまいと同じことで、相変わらず笑ひを浮べ、例の口中ピアノのやうな出歯を見せ、奉行にも、我々にも『へ、へ、へ!』を聞かせるであらう。(p. 111)

『へ、へ、へ!』といふ吉兵衛の声だけが、死際の吃逆のやうに聞こえてゐた。(p. 153)

吉兵衛は歯をむき出し、隅の方に坐って、八方にヘッヘッと云ってゐた。(p. 331)

まあ、よほど印象に残ったのだろう。これ以外にもあといくつか記載されている。今だって日本人の相槌が奇妙だってアメリカ人とかからは言われ続けている。ま、伝統だな。しかし「ピアノのやうな出歯」だの「死際の吃逆」だの、おもしろすぎるな、ゴンチャロフは。
▽モース『日本その日その日』

日本人は会話をする時、変なことをする。それは間断なく「ハ」「ヘイ」ということで、一例として一人が他の一人に話をしている時、話が一寸でもとぎれると後者が「ヘイ」といい、前者が「ハ」という。これは彼が謹聴し、且つ了解していることを示すと同時に、尊敬の念を表わすのである。またお互いに話をしながら、彼等は口で、熱いお茶を飲んで舌に火傷をしたもんだから息を吸い込んで冷やそうとでもするような、或いは腹のへった子供等が素敵にうまい物を見た時に出すような、音をさせる。この音は卑下か尊敬かを示すものである。(p. 105)

後半で書かれている息を吸い込むスーっていう音について、この仕草は周りにはもうないような気がするけれど、例えば、圓生の録音を聞いていると息を舌と歯の間から吸い込みながらやっていて、これかなあとも思う。耳障りに感じることもあって「へんな癖だな」と思っていたが、あれは伝統的仕草だったのかもしれぬ。
▽モース本は正字旧かなだった翻訳をむりやりというかそのまま新字新かなに改めているため逆に読み辛い。いや、読み辛くはないが、変に感じる。正字旧かなのゴンチャロフに続けて読んでいるので、脳がうまく切り替わらないだけかもしれない。
▽せせせはニンジン、固形飼料、乾燥パパイヤを食べた。